祭すんで川越の町冬はじめ         加沼 鬼一

祭すんで川越の町冬はじめ         加沼 鬼一

『この一句』

 数年前、埼玉県川越市で電車を乗り換えた時、偶然「川越まつり」に出くわして仰天したことがある。私鉄の特急電車で四十分ほどのところに住みながら、これほど絢爛豪華な祭が行われているとは知らなかった。酒井・松平氏の城下町、江戸中期からの「小江戸」という別称は伊達ではない。
 江戸の町には日枝神社の山王祭と神田明神の神田祭という二つの大祭があり、一年交代で江戸城への入場を許されていた。その「天下祭」の伝統を最もよく引き継いでいるのが川越まつりだという。毎年十月の後半に行われ、今年は二日間で百万人以上を集めたのだから、たいしたものである。
 東京の西部地域に住む者にとって川越は長らく、さつま芋の名産地というイメージが強かった。戦後しばらくは川越に芋を買出しに行き、飢えをしのいでいた人も少なくなかった。その地に関東を代表するほどの祭が連綿として続けられていた。この祭に込める川越の人々の思いはいかほどのものか。祭を終えた後の満足感、安堵感、「冬はじめ」の季語に、そんな雰囲気を感じ取ることができる。(恂)

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