野分過ぐ気うつ薄紙はぐやうに     山口斗詩子

野分過ぐ気うつ薄紙はぐやうに     山口斗詩子

『季のことば』

 秋になると台風は北上するにつれて右に(東に)曲がり、日本列島をかすめて太平洋上を北東に去って行く。これが「台風一過」で、古い言葉なら「野分過ぐ」。こうなると北の高気圧が張り出して、爽やかな秋の日々になっていく。人の健康や気分にも当然、いい影響を及ぼすことになるだろう。
 作者は毎年、春になると「気鬱」という「年中行事」が始まるという。夏は忍の一字でやり過ごし、ひたすら秋の到来を待つ。では、気分転換のきっかけは? もちろん台風一過である。それからというものは薄紙をはぐように気分がよくなり、いよいよ「私の季節」の到来となるのだ。
 このところ台風のコースがおかしい。いままでの常識と違って台風は九州の西側をかすめ、朝鮮半島の方に進んでいく。日本列島の東南洋上に夏の高気圧が頑張っているからで、そのため暑さは一向に衰えを見せず、冷房がないと寝られないような日が続いている。関東方面に台風の影響は及ばないが、その代わり「野分過ぐ」ともならない。作者の気鬱はどうなのだろう。ちょっと心配である。(恂)

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