新宿に青春の灯あり五月来る       大沢 反平

新宿に青春の灯あり五月来る       大沢 反平

『この一句』

 東京六大学野球の早慶戦が近付いてくる初夏の頃、夜の新宿の街に立ち、赤い灯、青い灯を見つめながら、「ああ、わが青春ここにありき」と思う。中高齢者の中には、この句を読んで「そうだなあ。あんなこと、こんなことがあった」と思い出にふける人が、かなりいるのではないだろうか。
 何十年も昔のことだ。早慶戦が終わった後の夜の新宿は早稲田の街になった。銀座の慶応に対抗し、この雑然とした大繁華街に早稲田の学生が押し寄せた。OBたちも続々と現われ、学生のグループを引き連れ、呑み歩いていた。他の大学の学生の一人として、私もその渦の中に紛れ込んだこともあったが、我が物顔でのし歩く早大生たちを、腹立たしげに、うらやましげに眺めていたものである。
 いま新宿の夜の街に立って見渡すと、最も目につくのが超高層ビル群の灯である。その下にある街の繁雑ぶりは依然とさほど変わらないが、早大生は「草食系が多くなった」とかで、バンカラ風は影をひそめてしまったそうだ。「慶応ボーイ、早稲田マン」なんて言葉は、まだあるのだろうか。(恂)

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