丘ひとつ埋め尽くしけり大躑躅   井上庄一郎

丘ひとつ埋め尽くしけり大躑躅   井上庄一郎

『この一句』

 躑躅(つつじ)は大群落を作る。「山歩きをよくやっていた昔、こういう景色に出会いました。あたり一面赤く燃えているような感じです」(頼子)という評があったが、雲仙、霧島はもとより、全国各地の山でこうした光景に出会う。山だけではなく、人工的に植栽された躑躅山も見事である。山躑躅が赤であるのに対して、こちらは白、紫、ピンクがかったもの、時には斑入りのきれいな花もある。古い神社や寺の裏山によく見られる。これもまた「丘ひとつ埋め尽くす」感じで一斉に咲く。晩春から初夏にかけて、桜が終わった後の野山や庭園を賑わす。
 堂々たる躑躅山の大らかな景色を描いた句だが、「丘全体を埋め尽くす大躑躅なんてあるんでしょうか」という疑問が呈された。そう言われてみると確かに一本の躑躅が全山を覆うというのはおかしいかも知れない。しかし、躑躅山を眺めていると、あたかも無数の木が根っこでつながっていて、親木の合図に従って一斉に花咲かせたかのようにも思える。この句はそういう躑躅の特徴をよく捉えている。(水)

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