強東風や発破に耐えて武甲山      加沼 鬼一

強東風や発破に耐えて武甲山      加沼 鬼一

『この一句』

 関東の名山の一つ、武甲山はサンゴ礁の石灰岩で出来ている。大昔、プレートの動きに乗って南の海から日本に到着、隆起して、堂々たる山容を現したのだという。そのために豊富な石灰岩を有し、江戸時代は漆喰、明治以降はセメントの原料として掘り続けられ、ついには頂上(三角点)の位置まで変ってしまったというから、びっくりすることばかりだ。
 武甲山は今も掘り続けられている。爆薬による破砕によって身は細る一方である。何年か前、西武秩父駅方面から見た時は、依然として貫禄ある山容を保っている印象だったが、やや方角の違う石灰岩採掘場方面からの眺めは、山肌を削り取られたみじめな姿をさらしているという。
 この句は上五の「や」で切れるのだろう。しかし強東風(つよごち)にも発破にも耐えている、とも読める。強東風よ吹かば吹け、爆破にもまだまだ耐えるぞ、というのが作者の言わんとするところだろう。関東に生まれ、武甲山をはるかに眺めて育った一人として、共感を覚える一句である。(恂)

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