孫帰り障子の穴や日脚伸ぶ   黒須 烏幸

孫帰り障子の穴や日脚伸ぶ   黒須 烏幸

『この一句』

 正月休みで来ていた孫たちが帰り、嵐の後の静けさが戻った。作者によれば奥さんはどっと疲れが出て風邪で寝込んでしまったという。「私も風邪気味、どうやら孫にうつされたらしい」と苦笑している。
 とにもかくにも老夫婦二人だけになった家の中は妙に広くなったように感じる。大事をとって一週間ほどは外出を控えた。何もすることがない。新聞も読んでしまったし、テレビはろくなものをやっていない。こういうときこそ積んである本を読む絶好の機会なのだが、どういうわけかその気にならない。
 今年の冬はめずらしく寒い日が続く。しかし暮れから晴天続きで、差し込む冬日はまぶしく、暖房の効いた室内は眠気を催す温かさだ。障子を閉てきってちかちか眼を射る日差しをさえぎり、うとうとする。「おや、あんなところに穴が開いている」。障子の穴から一筋の光が部屋を斜めに過ぎっている。「やりやがったな」とオジイチャンは孫どもの冒険の跡をなぞる。『孫俳句』の中ではこれはとても気持の良い句である。(水)

この記事へのコメント