暁闇の小便起きの寒さかな   片野 涸魚

暁闇の小便起きの寒さかな   片野 涸魚

『この一句』

 「小便起き」とはまた妙な言葉遣いだが、言い得て妙である。同じ句会に「初夢を頻尿癖に破られり 正裕」という句も出されたが、なんと言っても高齢者にとっての悩みの種がこの「小便起き」。せっかくぬくぬくと寝ているところを起こされるのだからたまらない。もう少しもうしばらくと我慢するのだが、ものには限界がある。覚悟を決めて起き出す。午前四時頃の便所の寒さといったらない。体内から暖まった液体を大量放出するせいか、ぶるぶるっと武者震いが起こる。
 「一度は当たり前、二度は普通、三度となると要注意」などと言われる。医者は何かというと「加齢」のせいにするが、この頻尿ばかりはまさに加齢のなせる業であろう。あきらめて寒中トイレ行を受け入れなければなるまい。
 しかし、勇を鼓して布団を抜け出し、決行して再び温かい寝床に潜り込む気持の良さは何ものにも代え難い満足感がある。何か大事業を仕遂げたような気分で、また眠りに落ちて行く。(水)

この記事へのコメント