冬めくや風仲見世を通り抜け   直井 正

冬めくや風仲見世を通り抜け   直井 正

『この一句』

 この作者は浅草が大好きらしい。「春風や浅草駆ける人力車」という気持のいい句もある。それだけに浅草をよく知っている。
 浅草寺の本堂は南を向いて建っており、雷門から本堂目指して宝蔵門に至る仲見世は当然のことだが南北に一直線。冬の北風は真っ直ぐに吹き抜ける。「風仲見世を通り抜け」という、少々ぎごちない措辞がかえって冬の仲見世の風情をよく伝えている。ことに客足がまばらになった夜間は吹き抜ける北風が肌身にしみ通る。
 この句を見たとき、最初はもう少しスムーズに詠んだ方がいいのではないかと「仲見世を吹きゆく風も冬めける」などと考えた。しかしどうもこれでは通り一遍の感じがする。やはり「ふゆめくや、かぜ、なかみせをとおりぬけ」と、ぽつぽつ切れる詠み方の方が、それほど強くはないが蕭条たる凩の感じが出るなと思い直した。(水)

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