おのが死を見据えし人や冬浅し       田村 舟平

おのが死を見据えし人や冬浅し       田村 舟平

『この一句』

 前書などはない。しかし句座に並ぶ誰もが故・大平昭生氏(本名・昭)の追悼句であることを知っていた。十月二十八日の当欄で(水)氏が紹介したように、氏は同月二十一日に亡くなられた。九月の句会には両国の自宅から神田の会場まで、自転車でやってこられるほど元気だったのに。
 奥様から来た挨拶状を見てびっくりした。「さて、私 大平昭はこの度死亡致しました。本来なら旅立ち前にご挨拶申し上げるべきでありますが、それもかなわず失礼申し上げました――」。氏は生前にこの文を用意しておき、奥さんに「死んだら読んでくれ」と告げていた。葬式はしない、香典は一切もらわない、音楽をかけ家族だけで送ってもらいたい、などとも書かれていたという。
 昭生氏は囲碁の愛好者であった。句の作者・舟平氏は、碁敵であっただけに、死を見据えていた故人への思いは一方ならぬものがあっただろう。お骨は愛用の碁盤の上に置かれ、大好きなお酒も供えられた。上記の挨拶文の最後には「暑くなく寒くもなしの世とはなり」の句が添えられていた。(恂)

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