葛のつる道に這い出る残暑かな     片野 涸魚

葛のつる道に這い出る残暑かな     片野 涸魚 

『季のことば』

 国道でもいいし、身近な散歩道でもいいのだが、人通りのあまり多くない道なのだろう。そこまで葛(くず)の蔓が伸びてきている、というのである。隣接する土地には葛の葉が一面に生い茂っているに違いない。その中の一、二本が、境界線を越えて道路にまではみ出しているのだ。
 葛の花は秋の七草の一つ。房状に咲くマメ科植物特有の蝶に似た花は、なかなか味わい深い。風が山野を吹きわたるときは、一斉に白い裏葉を見せて、これぞ秋、という風景も見せてくれる。俳句によく詠まれるのはもちろん、このような美しさなのだが、葛の本質を見つめると、全く別の側面が現れる。
 この句の主たる季語は「残暑」である。葛も秋の季語なのだが、ここでは「季重なり」の片割れとして脇役に甘んじねばならない。しかし存在感たっぷりの、他に代え難い脇役である。葛の葉は大きく、蔓は逞しく、強烈な太陽にも平然として自らの勢力を伸ばし続け、はびこり出したら絶滅不可能と言われるほどのしぶとさを持つ。葛という植物の本質は実はこういう暑苦しさにあった、と思い知らされる。(恂)

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