三つ指をついて空みる青蛙       堤 てる夫

三つ指をついて空みる青蛙       堤 てる夫

『この一句』

 蛙が「三つ指をついて」とは……、「まったく、その通り」と膝を打って感心するほかはない。俳句における「発見」とは、まさにこの句のようなことを言うのだろう。誰もが知っていて、誰も言わなかったこと。これこそが万人の理解し得る「発見」なのだ、と大いに感心していた。
 ところが、問題が発生した。この原稿を書くために、念のため事典で調べたら、蛙の前足の指は四本であった。私は三本指だと思い込んでいたので、事典の記述に疑念を抱き、写真で調べてみた。四本指もあったが、三本指の方が多かった。真実はもちろん四本指である。しかし角度の関係で三本に見えることが多くなるらしい。目に見える現実は三本なのだ、と自分で納得した。
 人間の指は五本である。そのうちの三つ指を突いて丁寧な礼をする。蛙が四本のうちの三本を突いて空を見上げていた、としても何らおかしくはなく、むしろ常識的な蛙の姿と言えるだろう。この場合、実際は四本指だよ、などと言っても何ら意味はない。三本だからこそいい俳句になったのである。(恂)

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