どくだみや恐竜の息の匂ひして       高瀬 大虫

どくだみや恐竜の息の匂ひして       高瀬 大虫

『この一句』

 カバの口臭は非常に強いという。おそらくワニもそうだろう。すると恐竜も、と考えられるが、何と「どくだみ」の匂いだったとは。カバやワニには川や沼の臭いがしみついているのだとすれば、陸上恐竜の口内にドクダミの匂いが籠っていてもおかしくない。その匂いが炎のごとく発せられるとなると、これは怖い。いかにも恐竜にふさわしいく、不気味さも加わった匂いである。
 恐竜は古代生物の中で、最も人々(特に少年たち)に親しまれている存在と言えよう。恐竜展は夏休みの恒例事業だし、図鑑の類も続々と出版される。それでいて恐竜にはまだ不明な点が多いのだという。皮膚の色がその一つで、図鑑などにある茶色や暗緑色などはあくまでも想像の産物なのだ。
 息の匂いももちろん不明である。それをこの句は「どくだみの匂い」と言い切った。「ごとく」や「やうに」などを用いていないところが効果的だ。どくだみは薬草でもある。嫌な匂いではあるが、「臭い」とは書きたくない。本欄もカバやワニの「臭い」に対して、ドクダミや恐竜は「匂い」と書き分けた。昔の恐竜少年の、恐竜へのフレンドシップによるものである。(恂)

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