湯上がりの髪をほどけば月涼し 安彦 真弓
『この一句』
風呂から上がって髪をほどく女性に、涼しげな夏の月を配し、浮世絵を見るような艶っぽい句である。7月の日経俳句会で高点を得たが、出席者が男性ばかりだったので、詠まれた場面がよく分からず、群盲象を撫でるような議論となった。
男性は髪を洗った時点でバラバラになるので、湯上がりの髪をほどくという表現が理解できなかったようだ。帰ってから妻に聞くと、女性は髪が長いので洗った髪を頭の上にまとめてタオルで包み、風呂を出てからほどいてドライヤーなどで乾かすという。洗わない時も髪が濡れないようにタオルで包んでおくようだ。
掲句は髪を洗った女生と考えた方が、風情が生まれる。濡れた髪をタオルで包んで風呂を出た女性が、乾かそうとほどく。月が見えているのだから、ベランダではなかろうか。涼しい風を受けながら乾かしているのである。見上げると空には夏の月が冴え冴えと浮かんでいる。湯上がりの女性が感じる涼しさと、月涼しという季語が相まって、夏の宵にふさわしい景である。
作者に聞くと、旅先の温泉宿での体験を詠んだという。そうだとすると浴衣の要素も加わり、艶っぽさが増す。「湯の宿に髪をほどくや月涼し」などと、勝手に考えてみたがどうだろう。
(迷 26.09.01.)
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