江戸はるか配流の島の花蘇鉄   中村 迷哲

江戸はるか配流の島の花蘇鉄   中村 迷哲

『この一句』

 「島」にはドラマがある。それぞれの島にはそれぞれの歴史と文化がある。住んでいる人の人生があり、訪れた旅人の視点もあるだろう。島々にまつわる物語に想いを馳せると、この言葉には多くの情報が凝縮されていることに気付かされる。
 掲句は、7月酔吟会の席題「島」の高点句だ。作者は、席題の出題者。江戸から遠い流刑地といえば八丈島だろう。関ヶ原の戦いに敗れた宇喜多秀家が八丈島に島流しされて以降、明治になるまでに1800人以上が配流されたという。
 「蘇鉄の花」は、夏の季語。6月下旬から7月にかけ花を咲かせる。かつて、八丈島に流罪となった僧侶・慈運は身の潔白を訴え、自死した。やがて慈運の墓に植えた二株の蘇鉄に花が咲くと、不思議と赦免状が届いたという。この故事により「ご赦免花(ごしゃめんばな)」との別名があり、花蘇鉄とともに傍題となっている。
 作者はもう一句「夏草や朽ちし戦車の残る島」を発表、こちらも好評を博した。太平洋戦争末期の激戦地、ペリリュー島(現パラオ共和国)を意識した句。日本兵10,000人の内、生き残ったのはわずか34人という惨劇の舞台だ。生い茂る夏草が芭蕉の名句を想起させる。
(双 26.08.16.)

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