ようもんた父の声する夏の家 岩田 千虎
『この一句』
この句は「ようもんた」の意味がわからないと、なんのことやらさっぱりわからない句である。句会では、「もんた」という名前の子に声をかけているのかと思った、という参加者もいた。「ようもんた」は「よく帰って来たなあ」という伊予弁。作者の岩田さんは愛媛のご出身で、自句自解に『夏休みに息子をつれて愛媛の実家に帰省すると、父は孫たちに「ようもんた、ようもんた」と嬉しそうに言っていました』とある。
口語方言の「ようもんた」を句の冒頭に持ってきたことで、この句は読み手にほのぼのとした懐かしさやユーモアを感じさせる句になったといえる。また、故郷の家を「夏の家」とさらりと詠んで、「帰郷」を連想させるテクニックも心憎いばかりである。
口語方言を冒頭に置いた俳句がほかにもないかと探してみた。伊予出身の正岡子規の「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」の「毎年よ」は方言ではないかもしれないが、「母の口癖がそのまま句になった」という趣旨の前書があり、それに近いと言えそうだ。同じく伊予出身の坪内捻典さんには「好きやねん天神祭鱧の皮」の句がある。「好きやねん」は大阪弁だが、間違いなく口語の方言である。子規・捻典・千虎・・・・・・伊予の俳句に通底する何かがあるのかもしれない。
(可 26.08.13.)
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