忘れるって時には大事牡蠣フライ 杉山 三薬
『この一句』
選句表にこの句を見つけた時、面白くてインパクトの強い句だなと、一番最初に丸をつけた。が、「ところで、なぜ牡蠣フライなのか」と疑問が湧いてきた。「海老フライ」では季語にならない。「鯵フライ」では季節が違ってしまう。消去法で「牡蠣フライ」かと思ったものの、あれこれ考えてもいっこうに答えが見出せない。考えあぐねているうちに、本物の牡蠣フライのように、一句の中から美味しい汁が滲み出してきて、直感を信じてこの句を採るべしと思うに至った。
作者の名前を聞いて、「この人ならではの豪快な句だな」と納得した。作者によれば、「牡蠣フライ」はただとってきてつけただけとおっしゃる。とかく一句の中の季語の役割を、意味の連関から考えこむことが多いが、取合せの句の場合、かけ離れた季語をぶつけた方が勢いがつく典型のような句である。こういう句は、理屈ではなく、感覚で捉えるのが正しいのだろう。
句会のあとの懇親会で、作者に「最初にいいと思ったら、なんでスパッと採ってくれないの」と問われた。その場ではうまく応えられなかったが、「頭が固いのです」とでも応えるしかない。あれこれ考えさせられた一句である。
(可 26.01.09.)
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