回送の電車ゆるりと冬に入る 植村 方円
『合評会から』(日経俳句会)
健史 「ゆるりと」「冬」の組み合わせが詩を醸し出しています。
誠一 仕事終えた車両が操車場へ向かう。地下鉄銀座線のイメージにどこか重なります。
阿猿 「回送の電車ゆるりと」までのテンポがいい。車庫に入るではなく、冬に入るというのも気が利いているなと思いました。
木葉 回送電車ってのは、スピード出して走るわけじゃなく大体ゆっくり移動する。「ゆるりと冬に入ってくる」というニュアンスが込められていて良い感じだ。
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「冬に入る」は「立冬」の傍題のひとつ。「冬立つ」「冬来る」「今朝の冬」とともに冬の始まりを謳う季語となっている。上記の同意季語のなかから、作者は「冬に入る」を選択した。作者にとって、この情景はほかのどの季語でもないと感じたのだろうか。句を詠むにあたり言葉に対する感性が試されるのは必然である。つねづね思うことだが、同じ意味でも「この季語を使うのか、うーん」と疑問が湧く句がないではない。これには「作者の勝手でしょ」、と大方から反論も出そうではあるが。
何を言いたいのかと言えば、掲句は雰囲気にぴったり嵌まっているということである。「冬来る」でも「今朝の冬」でも大きく変わりはなさそうだが、やっっぱり「冬に入る」が一番しっくりくると思う。
(葉 25.11.25.)
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