とりどりに森の香まとい茸汁 和泉田 守
『この一句』
この句が発表された句会では「森の香まとい、がいいですね」(方円)という句評があったが、まさにその通り。この句はこれで成り立っている。
今や「入山禁止」とか「キノコ取らないで下さい」の看板があったりで、昔は気軽にやっていた里山の茸狩りも思うに任せなくなった。しかし、地方の「道の駅」や駅前の市場などには地元の人が採った「自然のキノコ」が積まれていることがある。十年ほど前、芭蕉が辿った奥の細道をゆく吟行会を重ねた折に、地場のキノコを買い求めては口福に酔いしれた。この大袈裟な表現が決して嘘ではなく、自然のキノコは味わい深く、何より香気がある。「沢山のきのこを知ってるわけじゃありませんが、きのこごとにそれぞれの香りがします」(青水)と、越後で生まれ育った人が言うのだから間違いは無い。
この取り立てのいろいろな茸を取り合わせた味噌汁は実にうまい。味噌ではなく、油揚か豆腐を入れて醤油をちょっと差した清し仕立ての茸汁もいい。口にすると山気というかキノコの香気が鼻腔を抜ける。汁をすすり、茸を噛むとそれぞれの茸特有の香りがする。確かに「森の香まとい」である。
今やそうしたキノコがスーパーでいとも簡単に極めて安価に手に入る。キノコ好きの筆者は毎日キノコ汁や茸料理である。しかし、残念ながら「森の香」はほとんどしない。それは心の中で感じなさいということか。
(水 25.10.19.)
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