夜の森きのこ宇宙と交信す    岩田 千虎

夜の森きのこ宇宙と交信す    岩田 千虎

『この一句』

 9月の日経俳句会で16点という、めったにない高点を得て一席に輝いた句である。その一方で、全く評価しない人もいて、議論を呼んだ句でもある。
 採った人の多くは「メルヘンを感じます。童話の世界ですね 百子」とか、「ジブリの世界です。宇宙との交信も、ありうる 木葉」など、ファンタジックな雰囲気に惹かれたようだ。宇宙人との交流を描いた映画ETを連想した人もいた。
上手いのは上五の「夜の森」で時間と場所を限定し、真っ暗な森で光る茸を読者にイメージさせる点だ。月夜茸や夜光茸など光を発する茸は日本では十種類ほど知られている。夜の森に息づき、幻想的に光る茸から、「宇宙と交信す」との空想につなげる流れに無理がない。茸が胞子を飛ばす様子を宇宙との通信と見たのかも知れない。
 これに対し「全然、感心しなかった。奇を衒っているだけだと思った 水牛」、「異色な句だから、点が集まったんでしょう 双歩」など歯牙にもかけない人も複数いた。この違いは、俳句の世界にどこまで幻想や空想を許容するかによるのではないか。現実離れした内容をメルヘンと見た人と、嘘っぽいと思った人に分かれたのであろう。
SFやファンタジー映画を愛好する人ほど許容の幅は広くなる。句を採った16人のうち男性が14人を占めた。宇宙人の存在を心に秘めた〝少年〟が、それだけ多くいるということだろう。
(迷 25.10.01.)

この記事へのコメント

  • 胴長おじさん

    俳句も短歌も川柳も、失礼ながら宗教的ニオイを感じます。
    正解のないものに、無理やり秀作・佳作など決めつけて色分けするとこなんかが…
    2025年10月02日 12:35
  • 胴長おじさん

    もう一つ言わせてください。
    何を詠もうがご本人のご勝手ですし、想像か妄想かはその人の感じかたなので、岩田さんはそのように感じられたので、評価うんぬんより、ご本人の感性を尊重されることが大事だと思います。生意気申し上げすみませんでした。
    2025年10月02日 12:45