今年米少し離れて備蓄米 嵐田 双歩
『この一句』
今年は店頭の米が値上がりすると共に在庫がなくなり、ネットでは「令和の米騒動」などと呼ばれる年だったが、政府による備蓄米の再三の放出によって小康を得、そうこうするうちに新米が市場に出回るようになった。この句はそういう状況を詠んだものである。
「今年米」と「備蓄米」の五音が上下に配されて、その間を「少し離れて」が取り持つという、シンプルかつ語調の良い句である。
この日の兼題が「新米」であることもあり、また、「今年米」が最初に置かれていることから、この句の主役は「今年米」である。しかしながら、「今年米」で切れて、「少し離れて備蓄米」の文言が続く構造から、読み手の頭の中の映像は「今年米」から「備蓄米」の方に移動する。すなわち、主役はあくまでも「今年米」だが、脇役である「備蓄米」にもライトが当てられる。
「備蓄米」の在庫は、売れ残り気味だったり、あるいは、特売コーナーになっていたりして、やや寂しげである。「少し離れて」という軽妙な措辞に、そんな「備蓄米」を愛おしむようなペーソスを感じると言えば、深読みが過ぎるだろうか?こういう詠み方は、なかなか出来そうで出来ない。
(可 25.09.29.)
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