虹生まれしばしタイムの草野球  須藤 光迷

虹生まれしばしタイムの草野球  須藤 光迷

『この一句』

 夏場、たぶん梅雨時の草野球のハプニングを牧歌的に描いた句である。選手が虹を見つけ、試合を中断してみんなで見上げているのであろう。「分かりやすく、情景がすぐ浮かぶ」と共感する人が多く、7月の番町喜楽会で高点を得た。選句表ではすぐ隣に「虹立ちて五回裏より再開す 春陽子」という競作したような句があり、実は評者はこちらを採った。
 夏場の虹は、雨がざっと降った後の空に浮かぶことが多い。掲句は虹が生まれてからタイムをかけたと述べているが、試合中に雨が降ってきたら中断し、止んだら虹が出たと考える方が理屈に合うように思う。これに対し五回裏の句は、虹が立った(雨が止んだ)ので、試合を再開したと、空の変化と試合経過の平仄が合う。論理的と思えた五回裏の句を選んだわけだ。
 両句は同じような場面を詠んだと思っていたが、実は違っていた。句会での作者の弁によれば、小雨の中プレーが続いていた少年野球の試合で、虹が出たのに気づき、双方がプレーを中断して空を見上げた瞬間を詠んだという。
 たまたま句が並んでいたので、論理性に引きずられて選句したが、別々に読んでいたら評価が違ったかもしれない。俳句は理屈ではない、とよく言われる。論理的な整合性よりも、感性に訴えるかどうかが大事だという指摘だろう。草野球の句に人気が集まったことが、それを裏付けている。理屈を優先しがちな鑑賞態度を少し反省した。
(迷 25.07.17.)

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