また覗く転職サイト寒四郎    廣田 可升

また覗く転職サイト寒四郎    廣田 可升
縁結びスマホに頼る年男     中村 迷哲

『この二句』

 1月酔吟会で掲句と並んで『縁結びスマホに頼る年男 中村迷哲』が好評を博した。この二句は「転職サイト」と「縁結び」で本来毛色が違うのだが、SNS全盛の悲喜劇を詠んだ共通項があり、その背景が興味深い。
何でもかんでもSNSで済ませられる時代にいる。Ⅹ、メタが牛耳る情報の世界。グーグル、ヤフーであらゆることがスマホで検索できる。行き交う情報は玉石混淆、事実もあればとんでもない嘘もある。民主主義を壊しかねないニセ選挙情報などは早晩規制対象になるだろうが、いずれにせよ情報リテラシーが問われている。
 「転職サイト」の句を読めば苦笑を誘われる。しかし内実は笑うに笑えない。そこにあるのは転職流行りに非正規労働者の稼げる仕事探しだ。句中の人物がいまの仕事に満足していないのは確か。仕事中でもついつい何度もサイトを見てしまう。「また覗く」のフレーズがコミカルである。仕事は上の空で、会社のパソコンを私用使いしているのではないかと要らぬ心配もしたくなる。一方の「縁結び」も手拍子で笑えない。コロナ禍による接触回避の風潮とリモートワークへの移行で、男女の出会いの場がないという事情が尾を引く。結婚願望のある年男でも24歳ならまだまだ大丈夫。36歳、48歳ともなれば焦りも出てこよう。出会い系サイト頼みになるが、ぜひ優良サイトを選びなさいと、これまた要らぬお節介も。軽いタッチの両句であるが、見事に現代を風刺していると思うのだ。
(葉 25.01.19.)

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