金賞とシール貼られし寒卵    高井 百子

金賞とシール貼られし寒卵    高井 百子

『季のことば』

 もやしと並んで物価の優等生とほめられてきた卵も、近年はご難続きのようである。鳥インフルエンザの流行で一地域あたり何十万羽という鶏が殺処分されたり、酷暑で産卵量が大幅に減ったりしている。円安による飼料高騰も生産者には痛い。優等生であるかぎり、高値は消費者が許さない。なんとか以前の価格水準を維持しているというのが実情だろう。そんな卵もピンからキリまであって、6個パックで1000円を超える銘柄卵が各地にあるようだ。スーパーの特売では10個150円弱もあるから、すべからくモノの値段というものは自由自在である。
 掲句の卵は金賞とシールが貼られたもちろん高級品。しかも寒の真中のものだから売れ行きも確かだろう。寒卵は昔から滋養豊富といわれ長持ち、病人はもとより冬場の体力増強に珍重されてきた。こうした思いが人々の間にしっかり根付いているせいもあってか、句会で最高点を獲得した。身近な卵だけに選句者にはこの景が容易に見えた。金賞にふさわしく1個ごとに燦然と輝く金色のシールがある。
 ところで、12月句会には「寒中」の句はちと早すぎるとの声があった。季節のちょっと先を詠むのも俳句だが、同じく冬とはいえ年を越えた季語の句は感心しないということだ。そういう筆者も「寒昴」の句を出して他人のことは言えない。なにはともあれ掲句が佳句であることには異論なかろう。
(葉 25.01.09.)

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