冬紅葉かつて鉄路の眼鏡橋 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
幻水 名前が出てこないのですが、新幹線で廃線になった越後へ行く路線の風景でしょうか。百子さんが同じような句を作られたような記憶があります。
可升 信越線の碓氷峠の光景じゃないでしょうか。佐久に工場があって、しょっちゅう出張で行きました。峠の釜めしを食べたり、小諸の蕎麦屋に行ったりするのが楽しみでした。新幹線は早くていいのですが、風情はなくなりました。今年の秋はほとんど紅葉を見ることが出来ずに終わった気がしました。
双歩 具体的にはどこか分かりませんが、冬紅葉と相性がよさそう。
光迷(作者) ご指摘のとおり碓井第三橋梁、通称眼鏡橋を詠みました。廃線がいまは遊歩道になっています。
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この絵はがきのような光景はどこだろうと気になった。筆者には見たこともない信越線の碓氷第三橋梁だと作者が明かした。さっそく画像検索して成る程と思った。冬紅葉はもちろん冬の季語となる。目を奪う錦秋のときより、物寂びた初冬の方がかつて幹線だった鉄路跡には似合うだろう。眼鏡橋という名の古レンガ橋は、レールのない現状と同調してものの哀れを誘う。置き去りにされた鉄橋を舞台に、この句は一幅の絵画を届けた。おおかた葉を落とした冬紅葉が一片、二片散りゆくさまも見えるようだ。
(葉 24.12.22.)
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