熱々を噛めば汐の香牡蠣フライ 篠田 朗
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 特に解説はいらない。牡蠣フライが汐の香がしても当たり前。だがいきなり熱々って言われると確かに熱々はやっぱり美味しいよね、素直にいただきました。
方円 出来立ては何でも美味しいが特に牡蠣フライは美味しい。
三薬 この時期、毎年、娘から三陸の牡蠣をドカンと送ってもらっていたが、去年から急に送って来なくなっちゃった。そんなことを思っていたらこの句に出会って、思わず採っちゃった。
操 汐の香り立つ旬の味わい。美味しさの共有。
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牡蠣や帆立の出来が良くないという。夏の間の海水高温化によるものだと地元の漁業関係者は嘆く。身が思うように育たないので小さく、出荷量も激減しているようだ。牡蠣や帆立好きにとっては寂しい限りである。冬の食卓を彩るものの一つに牡蠣フライ。揚げたてを家族銘々5粒ほど皿に盛り、タルタルソースにウスターソースで、おっとレモンを絞るのも忘れずに頂けば、中身は火傷しそうな熱さながら‶口福口福〟。掲句は思わず牡蠣フライが食べたくなってしまう句だ。牡蠣フライの美味しさを詠んで納得。家族団らんの夕食風景も見えるようで、「熱々を」の上五とほんのり舌に乗る「汐の香」が効いている句だ。
(葉 24.12.16.)
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