鰡飛ぶや日に一便の連絡船    嵐田 双歩

鰡飛ぶや日に一便の連絡船    嵐田 双歩

『合評会から』(番町喜楽会)

百子 景が目に浮かぶような雰囲気のある句ですね。日に一便の連絡船になってしまった島。連絡船に乗る人も少なくて、そこに鯔だけが勢いよく飛んでいる。静かな島と海にある「動」の勢い。いいですね。
光迷 のどかで広い海に鯔が飛ぶ。映画のワンシーンみたいです。
可升 「鯔飛ぶ」と「日に一便の連絡船」の取り合わせで、それ以外の説明が一切ないのに、海上の天気の良さまで目に浮かびます。取り合わせのお手本のような句。
迷哲 鯔は汽水域にいることが多い。この句は連絡船が走る外洋だから、ちょっと鯔のイメージとは合わないのでは……。
水牛 いや、鯔は外海にもいますよ。北陸とか福井とか。そういう鯔は旨いんだ。
          *       *       *
 全国に大小1万4125の島があるという。この句の舞台は、住民も観光客も多くはない小さな離島だろう。本土と結ぶ連絡船も日に一便しか運航されていない。この句の「日に一便の連絡船」の措辞が、置かれた環境を簡潔に表現して揺るぎがない。鰡が飛ぶ舞台としてこの上なく、「取り合わせの句のお手本みたい」との評もうなずける。鯔が飛ぶ中を出港したのか入港したのかさておき、島の風景やのんびりとした生活までを想起させる句だと思う。
(葉 24.12.01.)

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