やれ笑へやれ走るなと七五三 玉田 春陽子
『季のことば』
「七五三」といえば十一月の風物詩であり、正式には十五日に三歳(男女)、五歳、(男児)、七歳(女児)が氏神に参る行事であると誰もが知っている。両親、祖父母にとってとにかく目出たい。一、三、五、七、九の奇数が縁起良いと言われるのは、中国の陰陽思想からきているとのことだ。そういえば、神前結婚式の三三九度の盃、三の膳付きの祝い膳はそれぞれ七菜、五菜、三菜だという。奇数信仰は今の世も厳然と生き残っている。
筆者は都内人形町あたりをよくブラつくが、この時季七五三参りの集団が目につく。子宝、安産の神社である水天宮は雑踏になるほど混む。パパ・ママ、じいじ・ばぁばを従え、ちびっ子たちが「わがまま」を尽くす日である。窮屈な着物、袴を着せられたちびっ子も大人も、神主のお払いが済むとどっと疲れが出てくる。その後に控える記念撮影がまた一仕事。疲れてご機嫌ななめなのに「笑いなさい」などと言われても。撮影が終わっていち早く表に出ようとして「走るな」と叱られたりと、受難の時間。
その日の情景を見てきたように生き生きと詠んだのが掲句だ。親としての経験ある向きなら一にもなく採りたくなる。筆者にはこの句に飛びつく理由がもう一つあった。関西にいる孫がこの句会当日、七五三参りだと聞かされていたからだ。この句を見て、今ごろそうなのだろうと頭に浮かんだ。巧みさで最高点の一角を占めた七五三句である。
(葉 24.11.23.)
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