小鳥来る百年蔵の喫茶店     星川 水兎

小鳥来る百年蔵の喫茶店     星川 水兎

『合評会から』(日経俳句会)

愉里 蔵を改装して今時のおしゃれな喫茶店に仕立てた風景なのでしょう。「小鳥来る」という季語に合っているかなと思って頂きました。
てる夫 百年蔵ですから、土蔵造りで壁も分厚く、中も薄暗い感じの喫茶店を想像しました。落ち着きのある憩いの場所になっているのでしょう。いい喫茶店を見つけたものだという感じです。
明生 百年も続いてきたような蔵が、今は喫茶店となっている。そこへ小鳥が飛んでくる。新旧の時代と生命が入り混じったような句だと思います。
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 今どきの観光風景を切り取った句になっているとみて、いただいた。酒蔵か味噌醤油の蔵かはわからないが、カフェ処を併設した蔵は少なくないだろう。蔵めぐりが外国人に人気を得ているという。発酵技術は日本のお家芸、外国人も醸造の現場を見たい。歳月を経た蔵のなかを見学したあと、利き酒にほんのり酔い、カフェコーナーでランチを楽しむ。「小鳥来る」の季題に、これら海を渡って来た外国人客を重ねたとも思える。ともあれ、コーヒーの香とともに日本酒でも味噌、醤油でもいいが、かすかな匂いが漂ってくる句になったのではないか。
(葉 24.11.15.)

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