乳がんの疑い晴れたりカンナ燃ゆ 山口斗詩子
『合評会から』(番町喜楽会)
愉里 単にほっとしたということじゃない、もっといろいろ複雑な思いが「カンナ燃ゆ」に託されている気がします。
白山 カンナの色は赤くて元気の出てくる色です。希望につながる色だと思います。
水牛 あれこれ心配していたのに、「癌じゃありませんよ」と言われた。その安堵感と湧いてきた元気を「カンナ燃ゆ」と表現したのでしょう。
可升 「疑い晴れたり」はわざと字余りにしたのじゃないでしょうか。「疑い晴れし」では軽くなってしまいます。
水牛 「晴れたり」の字余りがいいですね。素晴らしい句です。
* * *
評にあるとおり、不安の果ての安堵がよく出ている句である。鮮やかな赤い「カンナ」に仮託し、生命の情感を詠みあげた。「疑い晴れたり」と、きっぱり断言した作者は自身に言い聞かせているようでもある。俳句では中七の字余りをとくに戒める。それだけで採らないという人もいる。推敲を重ねて七音にする余地があるのに、それを怠ったのを見透かされているからだろう。この句はどうだろうか。作者は意図的に八音を選択したと思える。「晴れし」と「晴れたり」の間は可升氏の説に同意したい。中七の字余りは避けるのは当然ながら、まれに大きな効果を生むことがあるという例だ。
(葉 24.11.01.)
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