秋冷の朝五枚刃の剃り心地 廣田 可升
『季のことば』
「秋冷(あきびえ、しゅうれい)」は「冷やか」「ひやひや」という伝統的な秋の季語の言い換え言葉で、ことに近頃は「しゅうれい」という歯切れの良い響きが好まれて、盛んに詠まれるようになった。
もともとは残暑にうんざりしている時にふと感じる「冷え」を捉えた季語で、芭蕉に有名な「ひやひやと壁をふまへて昼寝かな」があるように、この「冷え」をなんとも有難いものとして受け止める気分がある。昔は初秋の季語で、今は三秋通しての季語とされているが、どちらかといえば仲秋から晩秋にふさわしい。
番町喜楽会10月例会で人気を集めた句で、「意表をつく取合せですが、五枚刃で剃ったすっきり感と秋冷の朝の爽やかさが、うまく響き合っている句だと思います」(迷哲)、「秋冷の朝と五枚刃の組み合わせがぴったりきました」(満智)、「体も冷えた洗面所でカミソリが滑らかに滑る。五枚刃の良さ」(てる夫)というように、「五枚刃カミソリ」の剃り心地と「しゅうれい」の気分との絶妙な噛み合わせを称賛する声が多かった。
私もこの句を採ったのだが、「五枚刃」というのが唐突で果たして通じるだろうかと少々疑問を抱いた。しかし、何の問題も無かったようだ。安全剃刀の元祖ジレットが十数年前に売り出した、刃が5枚付いているフュージョンという剃刀だ。何しろよく切れるし、ブキッチョなアメリカ人でも大丈夫なように安全にできている。入浴時にこれを使って頭のてっぺんから顎の下までするすると剃ってしまう。実に気持がいい。
(水 24.10.30.)
この記事へのコメント