知事殿に土産どっさり唐辛子  中沢 豆乳

知事殿に土産どっさり唐辛子  中沢 豆乳

『合評会から』(日経俳句会)

てる夫 今、人々に不愉快な感じを与えている知事殿なんでしょう。なんか嫌な奴と思いながら作ったような句だなと思い、頂きました(笑)。
青水 なんとも騒がしい兵庫県知事騒動。それを揶揄してまとめた時事句。唐辛子の辛みがピリッとくる皮肉もみえて、及第点か。
健史 時事問題を完璧にとらえたタイムリーヒットでは。
明生 兵庫県知事を痛烈に批判した句。土産どっさりと唐辛子の取り合わせが面白く、思わず苦笑した。
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 母方のおじいさんが神戸の製靴業界の親玉で大金持だったという。物心つく頃からこれにバカ可愛がりされ、自己中心主義の塊のような人間になってしまったと週刊誌などに書かれている。東大出て総務省のエリート役人になり、県庁など地方行政機関の幹部をいくつかめぐっている間に「おもらいぐせ」がついたのか、兵庫県知事になると県内視察の行く先々で「おねだり」頻発、さらには気に入らぬ部下を徹底的にいじめるパワハラで、ついには自殺者まで出した。それやこれやで県議会全会一致の辞職決議案通過。本人はそれによる知事失職処分を受けても平然、11月17日投開票の知事選に打って出る。与野党それぞれ対抗馬を立てての乱戦模様となったため、もしかしたらこの男がまた返り咲いてしまうかも知れないとも言われている。
 「唐辛子」という兼題を時事問題とからめてぴりりと利かせ、実にうまいこと料理したものだ。
(水 24.10.07.)

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