とげとげの心丸めて盆支度     篠田 朗

とげとげの心丸めて盆支度     篠田 朗

『合評会から』(日経俳句会)

枕流 イライラすることがあっても、先祖が帰ってくる間くらいは、気持ちを抑えるという感じがよく伝わってきました。
卓也 盆に集う面々の屈託あれこれに思いを馳せ、実感と共感が新た。
朗(作者) 毎年の盆支度は私の仕事。今年もそろそろと思っていた矢先に家内から督促され、ちょっとイラっとしてしまいました。提灯を組み立てながら盆くらいは心穏やかにと過ごそうと反省し、心を丸めた次第です(笑)。
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 「とげとげの心丸めて」というフレーズが実にユニークで面白い。人は皆どこかにとげとげしい心根を持っているし、ときには日ごろの憤懣が高じて噴出することもある。盆の時期はことさら角ばった感情は「丸く収めて」先祖供養し、子や孫の帰宅を優しく迎えなければならない。仏壇の前に盆提灯を置き香華を供え、坊さんの来訪を待つ盆用意。そろそろやろうかなと思っていたその時、奥さんから催促されたとすれば、イラっとするのは理解できる。子どもに「早く勉強しなさい」と言ったら、逆にしたくなくなるという児童心理と似ている。さすがに作者は分別盛り。イラつく心を反省し奥さんに応えた。家内の平和大事と大人の対応をしたのであろう。亭主族共感の持てる句だ。
(葉 24.09.10.)

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