なき人はよき人ばかり流れ星 廣田 可升
『合評会から』(番町喜楽会)
白山 感じがいい句ですねぇ。本当の気持ちなんだ。素直な人が詠んだ句ではないでしょうか。
てる夫 亡くなった人を偲ぶ気持ちは、こんな気持ちなんだなぁと感じました。死んだ人のことは、いい事しか思い出さないんだ。
春陽子 思い出とは、いい事だけが残るんです。それに「流れ星」という季語からはなぜか亡くなった人が頭をかすめる。この微妙なところを上手く詠んだなと思いました。
青水 名調子ですな。確かにおっしゃる通りといただきました。
迷哲 家族でも友人でも、先に逝った人はいい人ばかりというのは、残った者がよく抱く感慨です。「なき人」、「よき人」の対句表現、下五に流れ星を置いた語順などよく工夫された句です。
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仏教に慣れ親しんできた日本人の死生観のひとつは、死んでしまえば善人も悪人もない、すべて仏となるというもの。何世紀ものあいだ染み付いたその感覚が死者を敬い、菩提を弔う心を育む。「あんなに嫌だと思っていた元上司でさえ、亡くなってみればよき人に思えてきます」と、作者は句意を解説している。故人の嫌な思い出は死去と同時に雲散霧消する。後に残るのは笑顔とか僅かばかりのよい記憶。兼題の「流れ星」にぴったり合い、身近だった故人をしみじみ想う心情が浮かんで来る句だ。
(葉 24.09.06.)
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