三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋 中野 枕流
『合評会から』(日経俳句会)
迷哲 浅草界隈に泥鰌屋が何軒かあり、暖簾に泥鰌を染め抜いている。それが夏の風にはためいて客を呼んでいるようで、そういう光景が浮かんだので頂きました。
水牛 「三文字の暖簾くぐり」っていうのが、何てったってうまいね。これで採りました。
水馬 暖簾には“どぜう”と書いてあるんでしょうね。面白い句。
阿猿 「三文字の暖簾」という表現から想像が広がる。
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作者は「どぜう」の暖簾がかかる、浅草の「駒形」にでも入るのだろうか。鰻もめっきり高くなって、庶民には文字通り高根の花。鰻に比べれば泥鰌はまだまだ手が届く。刻み葱をたっぷり載せた鉄鍋を、箱七輪に置けばグツグツといい匂い。甘辛の泥鰌を口にふくみ、ビールや冷酒を迎え入れれば鍋のお代わり必至。ことに駒形は畳の入込みで江戸情緒をしのばせる。浅草界隈、鰻にはまる外国人客が増えたとのことだが、はたして泥鰌鍋は受け入れられるだろうか。姿そのままの「まる」はちょっと疑問符がつく。
余談が過ぎたが、この句は「鍋焼と決めて暖簾くぐり入る 西山泊雲」を思わせて食欲をそそる。泥鰌料理は「どぜう」でなければ雰囲気がでない。平仮名表記を意味する「三文字」が大いに効いている。
(葉 24.08.13.)
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