貝描く暑中見舞に海の音 篠田 朗
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 きれいな句です。海の音はしないと思うんだけど、上手いこと詠んだなと思って頂きました。
迷哲 ちょっと乙女チックだなと思ったんですが、他は元気のない句が多く、涼しさを感じる明るい句だったので。
操 貝の絵柄や構図をいろいろ想像。読み手にも海の音が伝わる。
鷹洋 暑中見舞のはがきに海の音付き。楽しそうで頂きました。
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高齢者の多い句会ということもあって、「暑中見舞」という兼題に寄せられた句には安否を問い問われる様子を詠んだものや、身の弱りをぼそぼそ述べた句が多かった。そうした中でこの句は皆が言うように、明るくて楽しそうなところがいい。
ヘタウマというのだろうか、画面からはみ出すように大きな貝殻が描かれている。おそらく甥とか姪とか若い後輩とか、とにかくこの暑中見舞葉書の差出人は作者が日頃可愛がっている若者だろう。背景の海と白波、青い空と白雲。乱暴といった方が良さそうな描き方だが、なんとも言えない味がある。
「これで涼味を感じ取ってください、と言われてもなあ」などと呟きながら「よし、今度ご馳走してやろう」などと相好を崩している。
(水 24.08.03.)
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