初めての育休男子半夏生     星川 水兎

初めての育休男子半夏生     星川 水兎

『季のことば』

 半夏生は二十四節気の各節気を三分した七十二候のひとつ。夏至の三候で、7月1日頃から小暑前日までの5日間にあたる。水牛歳時記によれば、半夏(カラスビシャク)というサトイモ科の薬草が生える頃なのでこう名付けられたという。
 日本では梅雨の末期で、田植えがすっかり終わった頃になる。「農家が田植えという大仕事を終えて、ほっと一息つき、半夏生から五日間は休みを取る習慣が日本各地にあった」(水牛歳時記)。半夏生の雨には毒があるから外に出るなとか、野菜を取ってはいけないなどの諫めがあり、水牛氏は「仕事を休むことに負い目を感じないで済むよう生まれた言い伝えであろう」と考察している。
 掲句はそんな歴史、風習を背景に持つ季語に、「育休男子」という極めて現代的な言葉を取合せ、清新な味わいを生んでいる。育児休業制度は子育て支援のために設けられたもので、母親だけでなく父親も1年間休業できる。しかし「子育ては女性の役割」という社会観念は根強く、母親の取得率が85%と高いのに対し、父親は13%にとどまる。最近は「イクメン」という言葉も登場するなど、男性の取得をいかに促すかが課題となっている。
上五の「初めての」は、育休を取る男性社員がいなかった職場で、初の取得者が出たという意味であろう。そこに農家の休みを促すという半夏生の風習を重ね、思い切って育休を取った男性社員に拍手を送っているのである。子育てに奮闘するパパに、頑張れと声をかけたくなった。
(迷 24.07.25.)

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