旧交を葛餅に蜜掛けながら    嵐田 双歩

旧交を葛餅に蜜掛けながら    嵐田 双歩

『合評会から』(日経俳句会)

青水 繰り返しこの句を鑑賞していると、自分もその場にいるような気分になってきます。季語の持つ力を十分に引き出して、味わい深い物語を紡いでいる。
而云 これは巧いな、と思いながら選びました。
三代 久しぶりに会った女友だちが、葛餅に蜜をかける間も惜しんでお喋りしている景が浮かびます。
水馬 葛餅を囲んで旧交を温める良い感じです。さぞや楽しい思い出があるのでしょう。上五の「を」が良い。
反平 葛餅の懐かしい味には何故か旧友につながるものがある。
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 「みんなの俳句」のコメントには『合評会から』『この一句』『季のことば』の三種類がある。『この一句』はその句に寄せるコメンテーターの思いを縷々述べたもので、読んで心地よいオマージュともなっている。『季のことば』は作者が歌い上げた季節感を敷衍し、評者の感慨を加え唱和するものである。「なるほどな」と思うところが多い。それに対して『合評会から』はどうか。選んだ人たちの句評を並べただけでコメンテーターが後ろに隠れてしまった感じがする。「他人任せ」の「手抜き」批評ではないかという人もいる。
 私はちょっと違う考えを持っている。複数の人が交々語る句評はとても面白い。「良い句評」が揃った句を抜き出すのはコメンテーターの眼識であり、それを『合評会から』として紹介するのは有意義なのではないかと。この句と合評会発言、その好例ではなかろうか。
(水 24.06.01.)

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