満開の桜車内をどよめかす    植村 方円

満開の桜車内をどよめかす    植村 方円

『合評会から』(日経俳句会)

双歩 車窓から突然に桜が目に入った瞬間のどよめきが聞こえてきそうです。特急とか速い電車は無理でしょうが、なかなかリアルだなと思いました。
三代 満開の桜を間近に電車が走るときのざわめき。あるあるです。
早苗 桜をスターのようにとらえた表現が面白いです。
百子 沈黙集団の車内。車窓に広がる桜に皆感動して皆声を上げたのですね。満開の桜は人々の感性を呼び起こします。
十三妹 (歩くのが難儀で)長いこと電車やバスに乗ることがないので、その光景が羨ましい。
戸無広 桜のトンネルに差し掛かったときの車内の様子、動きが感じられます。
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 ローカル線では、沿線の菜の花や紫陽花、紅葉などが魅力の観光名所が多い。桜もその一つ。満開の桜のトンネルの中を一、二両編成の電車がトコトコ走る光景が目に浮かぶ。旅雑誌の表紙などで見たことがある。そんな車内では、乗客は期待している分、桜が車窓に映ると「おーっ」と歓声が上がるに違いない。いかにもありそうなシーンを上手く掬い取った句と評価した。
 一方、水牛さんは「満開の桜と言っておいて、車内をどよめかすと続けるのは、どうも叙述的に繋ぎが悪い」と言い、「誰かが桜の枝を電車内に持ち込んだのかと思った」そうだ。言われてみれば、そうかそんな捉え方もあるのかと気付かされた。短詩型の俳句では、言いたいことが正しく伝わるとは限らない。とはいえ、作者の意図しない解釈が生じることも俳句の面白みではないかとも思う。
(双 24.04.28.)

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