甘き蜜吸いつつ登るつつじ坂 斉藤 早苗
『この一句』
そうそう、私も子供の頃よくやったものだ。ラッパ型の躑躅の花を元のところから抜いて、ちゅうちゅう吸うと甘い蜜の味がする。4月になると公園にはツツジが満開、学校へ通う道筋にもたくさん咲いているから子供たちは大喜びだ。
この句の作者は大人になってもまだやっているのかな。「つつじ坂」というのは固有名詞なのか、散歩道に命名したものなのか、とにかく道の両側にツツジが咲き乱れる魅力的な坂道に違いない。童心にかえって花弁をつまみ、足取りも軽く坂を登っている作者の姿が思い浮かぶ。とても楽しい句だ。
しかし、御用心。躑躅には有毒のものがあるのだ。道路脇や公園に植えられているオオムラサキという紅紫色の大きな花を咲かせるツツジは大丈夫だが、朱色あるいは濃いピンク色のレンゲツツジは花や蜜にグラヤノトキシンという毒を持っている。この蜜を吸うと吐き気や下痢、目まい、けいれんを起こす。シャクナゲやアセビなど同じツツジ科の花木も有毒だ。
花の一つや二つ吸ったところですぐに死ぬようなことはないが、危険なことは確かだ。レンゲツツジやシャクナゲは公園に植栽されていることも多く、素人目にはどれがオオムラサキでどれがレンゲツツジか判断のつきかねる場合もあろう。まあ躑躅は眺めて楽しむだけにして「蜜吸い」は止めておいた方が無難だ。
(水 24.04.25.)
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