眠る子のズシリと腕に花疲れ   嵐田 双歩

眠る子のズシリと腕に花疲れ   嵐田 双歩

『合評会から』(日経俳句会)

方円 花見をしていて、子を抱っこしながら詠んだのでしょう。確かに小さい子は寝ると、ズシリと急に重くなる。親も疲れると思います。花疲れと物理的な重さの疲れの両方を上手く取り合わせたと思います。
水牛 お花見の夕方の感じがよく出ている。おそらく三つ四つの子でしょう。明るいうちはキャーキャー言って走り回っていたのが、くたびれ果てて抱っこをせがむ。抱っこしてやるとすぐ寝ちゃって、親の方も疲れているのになぁという、そんな感じがね。伝わってきていい句です。
静舟 幼子のぐっすり身体に引っ付いて眠れる姿は愛しいが、こちらも汗ばんで腕も限界となる。鍛えられました。
操 花のシーズンによく見かける情景。大人をよそに子はすやすや夢の中。
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 各地の花の名所に久しぶり、インバウンド客も押しかけあふれかえった今年。そもそも花見は楽しさの反面、終始疲れるもの。まして小さな子を連れて雑踏に分け入れようものなら苦労は絶えない。子がはしゃぎ過ぎの末に眠ってしまえば背負うか抱くか、親はその重さに疲れがどっと出る。作者一家往年の花見を詠んだ句だ。「ズシリと腕に」の中七に、子への愛情と本人の悲哀がこもっている。「花疲れ」のファミリー版として納得できる句である。
(葉 24.04.24.)

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