春うらら傘寿揃ひてランチ会   久保田 操

春うらら傘寿揃ひてランチ会   久保田 操

『季のことば』

麗か(うららか)とは、角川俳句大歳時記によれば「春の日が美しく輝きわたり、すべてのものが明朗に感じられる状態」をいう季語である。水牛歳時記では、春の気持ちよさを表す季語として、気温に着目した「暖か」、陽光に意のある「麗か」、気分をいう「長閑」の三つをあげている。麗かは、「春うらら」の形でよく用いられるが、陽光の明るさに主眼があるので、秋麗、冬麗の季語もある。
掲句は、陽光降り注ぐ暖かい春の昼に、傘寿を迎えた面々が相集ってランチ会を開いている場面を詠む。80歳の爺さん連中がランチ会を開いても絵にならないので、ここはお婆ちゃん達と読み取るのが普通であろう。「揃ひて」という措辞は、たまたま集まった人が傘寿だったというより、学校の同級生あたりが久しぶりに打ち揃ったという響きがある。
冬の間は寒さやインフルエンザで外出を控えていたが、暖かい春を迎え、久しぶりに集まりましょうとなったのであろう。春うららの季語が、お婆ちゃんのランチ会にぴったりで、春の訪れを喜ぶ気分とともに、弾むようなおしゃべり声まで聞こえてきそうだ。
80歳といえば、太平洋戦争末期の生まれ。戦後の混乱期に育ち、激動の昭和を生き抜いて、平成・令和と子や孫の成長を見守ってきた。同じ時代を生きてきた仲間同士、ランチ会の話題は尽きなかったに違いない。
(迷 24.04.07.)

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