木瓜の花金婚なれど未知あまた 岡田 鷹洋
『合評会から』(酔吟会)
青水 五十年経っても分からないことがまだいっぱいある。素直に、いい俳句だと思っていただきました。愛情表現を、ストレートに詠んだいい句だと思います。
水馬 いい句だと思って採ったのですが、「未知あまた」に少し違和感がありました。
三薬 金婚の爺さん婆さんに「木瓜」は良くないし、全体に理屈っぽい句だと、採ったことを反省しています(笑)。
双歩 「木瓜の花」をもってきたのは、すでに呆けているということなのかな。
愉里 長年連れ添ってきてもまだ知らないことが沢山ある。そういう目で相手のことを見ているところが、この句のいいところではないかと思います。
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夫婦の機微を詠んで高点を得た句である。結婚五十年を迎えた老夫婦ながら、この作者は妻に知らない部分がまだ沢山あるという。金婚なのに「未知あまた」は考えられないと筆者は思ったが。季語に「木瓜の花」を持ってきたところが作者の意図するところとみえる。呆けに通じる語音が、記憶力がとみに衰えた夫婦の現在を表す。未知あまたと言いながら、昔から知っていたことも忘れ去り、妻の仕草・心象をあらためて新鮮と意識したと捉えれば納得できる。まずは連れ添った歳月に敬意を払おう。
(葉 24.03.26.)
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