春雪の庭に舞ひ来る尾長二羽 堤 てる夫
『合評会から』(番町喜楽会)
水兎 尾長は結構大きくて、あれが庭に来たら嬉しいですよね。最近は都内でもよく見掛けますが、百子さんの句かなあ。
双歩 先日の関東の降雪か、あるいは上田あたりの実景か。
木葉 何とはない光景であるが、このあいだの雪を抒情的に詠んだ。降る雪には不思議な感覚があり、景が容易に想像できる。
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オナガは体長40cm近くあるそうだが、尾羽が20cmと長くその名がついた。体の大きさはムクドリくらいでカラスの仲間。庭にやって来たらそれなりに存在感があるだろう。
長野の上田在住の作者宅には広い庭がある。手入れは大変そうだが、四季折々の自然の移ろいは、何よりのご馳走だ。上田は飯山辺りに比べると積雪は少ないが、雪はよく降る。春の雪に覆われたモノクロの庭に、尾長が舞い降りた。ただそれだけを言っているが、作者の感動、喜びが静かに伝わってくる。
最近、作者は大臼歯を抜歯したという。雪の中の歯科医通いは難儀そうだが、家に帰れば庭の野鳥が疲れを癒やしてくれると、掲句が語っている。
(双 24.03.20.)
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