老梅のぽつりぽつりと語るごと 向井 愉里
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 「語るごと」の下五がきれいでいいですね。
木葉 梅の老木のなにか言いたげな佇まいと、一輪一輪ぽつぽつ咲くことを掛けたのは明らかだが、その技巧的な表現が光ります。
水牛 いい句なのだけれど「ごと」が気になりました。「老梅のぽつりぽつりと語りをり」でいいのじゃないかな。わが家の白加賀という梅も三十年くらいたっていて、まさにこの通りです。
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「ごと」が良かったという人もいれば、避けた方が良いという人もいて、こういうところが俳句の難しさだと思う。筆者は「老梅」の音から「老婆」を連想してしまった。よこしまなことではあるが、そう思い込むと、「ぽつりぽつりと語るごと」は、ただの擬人化ではなく、妙にリアリティのある表現だと思えてきた。
「ごと」について問われた作者は、自分でも「ごと」を使うのが良いかどうか迷ったが、自分が見た実家の老梅は「語りおり」というような風情ではなかったときっぱり言う。その発言を聞いたとき、この句は技巧によって作られたものではなく、老梅を眼前にして作者が感じたことを、そのまま素直に文字に写したものに違いないと思えた。静かで心地よい余韻のある句である。
(可 24.02.27.)
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