梅咲いて色無き庭の初化粧    前島 幻水

梅咲いて色無き庭の初化粧    前島 幻水

『おかめはちもく』

 冬枯れの色のない殺風景な庭に、梅がちらほらほころんでくると、そこだけ明かりが灯ったようで、ほっとした気分になる。まだまだ寒さが続く1月後半から2月にかけて、梅は真っ先に春の気配を届けてくれる。
 「冬の庭がぽっと明るくなる感じが伝わってきます」(満智)、「冬の庭は閑散として侘しい。梅の花がぽつぽつ咲きだすと春が間近に感じられ嬉しいもの」(斗詩子)、「冬の花のない庭に寒さを厭わず咲く梅に、庭を初化粧してくれたとはいい表現」(二堂)。筆者も含め掲句を採った人は同様の感想を述べ、概ね好評だった。「概ね」と言ったのは、この句にはいくつか気になる表現があるからだ。
 「初化粧」は「初鏡」の傍題で新年の季語。「色無き庭」は「秋風」の別名「色無き風」を想起させ、やや感興を削ぐきらいがある。選んだ人はその辺り気にはなっても、句全体の雰囲気で共感したのだろう。
 さて、表題の「岡目八目」。大先輩の句に手を入れるのは甚だ僭越だが、筆者なりに改善策を探ってみた。まず「初化粧」は「薄化粧」でどうか。「梅咲いて」を「や」で切って、「色無き庭」を「色失せし」にすると、「梅咲くや色失せし庭薄化粧」となるが、原句に比べ口調が悪い。いっそ「色が無い」という修飾語を諦めたらどうだろう。例えば「梅咲くや狭庭ほんのり薄化粧」とか。残念ながら、筆者の力量ではここまで。後は読者諸兄の知恵をお借りしたい。
(双 24.02.22.)

この記事へのコメント

  • 酒呑堂

    私も句会でこの句を見た時、評者と同じ様な疑念を抱きました。「色無き庭」といえば誰しも冬の庭と思いますよねえ、しかし詩歌の世界では「色無き」は秋。「初化粧」といえば新年。こんな窮屈な縛りは取っ払ってしまえ、という意見もありますが、こうした窮屈な縛りの中で遊ぶところにも伝統的な詩歌の楽しみがあります。(双)さんの「おかめはちもく」に全面的賛意を表します。
    2024年02月22日 00:13