節分や仕事の鬼の帰り待つ   玉田 春陽子

節分や仕事の鬼の帰り待つ   玉田 春陽子

『この一句』

 「今時、仕事の鬼なんて…、誰なんだ」。句会で一票を投じたのは、それが知りたかったからだ。実際、合評会では「仕事の鬼なんて死語じゃないかと思いました。会社でこんな言葉を使ったら、どう思われるのかとも」という声も出た。さらに「『節分の仮面が父の帰り待つ』という村田悠水の句を思い出し、採れませんでした」という人も。
半面、「仕事の鬼と言い切ったのがいい」という好意的な意見や「帰り待つ、という措辞に昭和の家庭の雰囲気が感じられ」とか「若い頃を思い出し」という来し方を振り返っての感慨も聞かれた。平均年齢は古希を越えたと見られ、「企業戦士」と呼ばれ「24時間戦えますか」の歌を聞いて過ごした世代の句会だけに、妥当なところではある。
そして頭に浮かんだのは「俳句甲子園の高校生あるいは大学生は、この俳句をどう受け止めるだろうか」ということだ。いまや『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』という本が6刷を数える時代である。我が国でも在宅勤務が普及してきたというものの…。「歌は世に連れ、世は歌に連れ」を思わせる句だった。
(光 24.02.20.)

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