ぼけ封じ互ひに願ふ冬温し 中村 迷哲
『合評会から』(日経俳句会)
三薬 我々ぐらいになると呆け封じというのが大テーマになっているので、いただきました。
静舟 温暖化の冬のなか、呆け封じをお願いしながら睦まじく老夫婦の長生きを願う。
豆乳 仲のいい老夫婦が互いの息災を願う。うらやましいです。
十三妹 もう呆けが来ている身としては「冬温し」が引っ掛かったのですが、それもありかと。「冬寒し」より実感があるかな。
水牛 私も一生懸命、寿老人の頭を撫でてきました。季語については「冬桜」でも良いかなとも思いました。
迷哲(作者) 日頃からどっちが先に呆けるか、という話をよくしています。
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日経俳句会ことしの七福神参りは、芭蕉翁みちのく出立の地千住。平均年齢七十越えの面々が巡る祈願の本命は「ぼけ封じ」だったのではなかろうか。呆け封じを謳う神社はほかにもあったが、寿老人を置く元宿神社が本元を自負していた感じ。歩き疲れた老人を思って、椅子の用意と氏子による茶の接待もあって皆々一息ついた。一月七日は折からじつに気持ち良い冬晴れ。夫婦参加組も互いに社前で、どうぞ呆けにならないようにと賽銭を投じていた。七十、八十を越えるともはや神頼みしか安心立命の境地に近づけない。老夫婦が社前に願う姿に「冬温し」の季語がいかにもぴったりくる。
(葉 24.02.04.)
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