異母妹といふ名の縁根深汁    高井 百子

異母妹といふ名の縁根深汁    高井 百子

『この一句』

 酔吟会初句会の席題「縁」の句である。席題句は、句会の当日に発表される題に応じて、その場で即興的に詠まれる句である。この句を選んだ評者は、短時間の間にこんな句が詠まれるとは、なんということかと驚きの声を上げた。「異母妹といふ名の縁」で、読者はなにやら訳ありの事情がある人間関係を想像する。それと「根深汁」の取合せ。「根深汁」は長ネギ(白ネギ)と揚げなどを具材とする味噌汁であるが、決して日常的に使われる季語ではない。むしろ「根」「深」の文字面が、「異母妹」という言葉とついつい呼応してしまう。こんな取合せの句を即座に作るとは、と思ったのである。
 種明かしをすれば、この句会ではくじ引きで席題の出題者を決めており、作者は当日の出題者であった。つまり、兼ねて自分の出す席題を知っており、その場で即興で詠んだのではなく、十分時間をかけて作った句であったということである。
 作者によれば、昨年突然息子たちのところに異母妹という女性からメールがあったとのことである。作者はそれもまた「縁」ですからと意に介さず、さらっと句に詠んだとの事。季語が見つからず苦慮したというが、こういうことをさらっと詠む胆力と、苦慮の末に「根深汁」にたどり着いた俳句センスに、即興であろうがなかろうが、やはり、驚かざるを得ない一句である。
(可 24.02.01.)

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