たはむれにフラフープして十二月 玉田春陽子
『この一句』
フラフープという懐かしい遊具の登場に、思わず採った句である。幼い頃を思い出した人も多く、句会はフープ談義でしばし盛り上がった。
フラフープはプラスチックの細い輪を、腰や首のひねりで回転させて遊ぶおもちゃ。米国でブームを呼び、昭和33年(1958)秋に日本で発売されるや大人気となり、瞬く間に全国に普及した。1カ月で80万本売れたという記録が残っており、映画や歌まで作られた。しかし熱中した小学生の胃に穴が開いたり、交通事故が続いたことで、熱が冷めるのも早く、2年ほどで姿を消した。
掲句はそのフラフープに十二月という季語を取合せて、ほのぼのとした可笑しみを醸し出している。大澤水牛氏が「十二月なので物置の掃除でもしていたら、フラフープが出て来たんでしょう」と読み解くと、金田青水氏が「忙しい師走なのにフラフープなんかしてということでしょうか」と応じ、句の解釈は定まった。「たはむれに」の上五が、ほんわかした遊び心をよく表している。
フラフープは過去のものと思っていたら、廣田可升氏が「ヨガとか、新体操の道具で結構売っていますよ」と最新事情を教えてくれた。作者によれば、お孫さんが持ってきたフープを、昔取った杵柄とばかりに試したのが実景という。80歳を越えた作者にとって、結果が「年寄りの冷や水」に終わったのは、言うまでもない。
(迷 23.12.22.)
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