今朝の冬顔を小さく洗ひけり  玉田 春陽子

今朝の冬顔を小さく洗ひけり  玉田 春陽子

『合評会から』(番町喜楽会)

てる夫  何気ない毎日の些細なことをよく見つけましたね。夏はじゃぶじゃぶ洗っているけど、水の冷たくなった今の季節は、ちょこちょこっと…ということですかね。
百子 「顔を小さく」という措辞が微笑ましいですね。この家はお湯が出ないのかしらなんて思ってしまいますけれど(笑)。
白山 「小さく洗いけり」が新しいなぁ。ちょこっとという感じですかね。
青水 立冬の朝に顔を洗う。「小さく」の四文字が詩的な世界を上手く構成しています。
可升 明後日が立冬、タイミングの良い句です。実際に小さく洗ったわけではなくて、立冬の気分を表現したのでしょうね。上手く詠んだと思います。
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 日常の些事を作者お得意の句法で、この日の最高点をさらった。上記の評にある通りよくぞこの何でもない朝の日課をとらえた。寒い朝は洗面もさぼりたい気持になる。口元、目元をさっと濡らしてお仕舞に。猫の顔撫でじゃあるまいし、作者はそんな気分を「立冬(今朝の冬)」の季語にぶつけた。今年は十一月まで真夏日が途切れなく続く日和だから水もまだぬるい。「へェー物ぐさだなあ」とちょっと心配もするがあくまで俳句の世界である。作者も「冷たい水になると、ちょこちょこっとねということです(笑)」と句意を明かしている。
(葉 23.11.21.)

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